5月2日礼拝メッセージ@園部会堂 「人生を見守ってくれている他者」

宇田慧吾牧師

 3週間、高校生たちと太宰治の『人間失格』を読んできました。読み終えると、どーんと大きなものが心にもたれかかってくるようで、やはり名作です。

 主人公の葉蔵には嘘をついてしまう癖がありました。本人は性癖と言っていますが、悪意でもなく、何かのためにということでもなく、とにかく自然と嘘を言ってしまうのでした。自分の本心を言えない人なのでした。

 本人も自分の問題を自覚していて、「もし神さまが、自分のような者の祈りでも聞いてくれるなら、いちどだけ、生涯にいちどだけでいい、祈る」と切実に問題の解決を願ってもいました。けれども結局、自分を偽って生きる癖は改まることなく、彼の弱さに惹かれて支えようとする女性たちを不幸にしていくのでした。

 葉蔵自身の生涯は最後まで希望を見出すことなく、ただ無常を悟ることだけが描かれています。一方、物語の最後はバーのマダムの印象的な言葉でしめくくられます。

「私たちの知ってる葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、…神さまみたいないい子でした」

 葉蔵は自分の人生を「人間失格」と見なしていました。一方、葉蔵に出会った周囲の人たちは弱く苦しんでいる彼を案外素直に愛していたようです。

 人生は自分一人の視点で完結するものではありません。自分では解決できない弱さや癖や苦しみが、出会いの中で愛や慈しみを生み出すことがあります。自分視点の良し悪しに囚われすぎず、時折、私を見守ってくれている他者の存在に心を向けたいものです。

 私を見守ってくれている他者は、身近には家族や人生の中で出会わされた人たちかと思います。聖書はそういった人間同士の支え合いを勧めると共に、神さまもまた私たちを見守ってくれている他者なのだということを語りかけています。神さまを信じて生きている人にとって、自分では自分を肯定できないような時にも、神さまが深い愛をもってそばにいてくれることはありがたいことです。

 今日の聖書箇所にはパウロが神さまからどのように見守ってもらっていたかが書かれています。パウロは救われてからも、「うめく」ような苦しみを持っていました。そのようなうめきの中で、パウロは神さまの支えを受け取っていました。

「同時に希望を持っています」
「忍耐して待ち望むのです」
「霊も弱いわたしたちを助けてくださいます」
「万事が益となるように共に働くということを、わたしたちは知っています」

 パウロはうめくような苦しみも神さまのご計画の内にあって、希望につながっていると信じていました。このように自分の視点では苦しい出来事や状況を、神の視点、大きな視点、長い時間の中では「万事が益となる」と信じることを教会では「導きを信じる」と言います。

 導きを信じて生きてきた信仰の先達者たちは、人生の困難の中で希望を持ち、人を愛し、信じ続ける生き方の美しさを証ししてくれています。人生を支えてくれている他者の存在に心を向け、しなやかに粘り強く生きていきたいものです。

2020年5月3日の週報

●コロナウイルス感染拡大を防止するため、教会に集うことができません。礼拝の式次第を掲載いたしますので、各ご家庭で共に祈り、賛美しましょう!●

〇礼拝式次第 復活節第4主日
亀岡礼拝(亀岡会堂) 午前10時30分
司会:片岡広明牧師 奏楽:HymnPlayer      

前  奏          
招  き  詩編 143:8
頌  栄  24(たたえよ、主の民)
主の祈り  (讃美歌93-5A)
使徒信条  (讃美歌93-4A)
聖  書  ヨハネによる福音書
      21章15-25節 (新P.211)              
祈  祷         
讃  美  327(すべての民よ、よろこべ)
説  教   「行きたいところ、行きたくないところ」   
祈  祷        片岡広明牧師
讃  美  97(羊飼いの羊飼いよ)
献  金  
頌  栄  27(父・子・聖霊の)
祝  福        片岡広明牧師
報  告

船南礼拝(園部会堂) 午前10時30分
司会:宇田慧吾牧師 奏楽:今井恵一兄         

前  奏  奏 楽 者
招  き    ヨハネ21:18   司 会 者
頌  栄  24(たたえよ、主の民)
主の祈り  (讃美歌93-5A)
使徒信条  (讃美歌93-4A)
聖  書  ローマの信徒への手紙
      8章18-30節 (新P. 284)
祈  祷  司 会 者
讃  美  46(すべての人よ) 2回繰り返し
説  教  「私を見守ってくれている他者」
祈  祷        宇田慧吾牧師
讃  美  528 (あなたの道を)
献  金  感謝祈祷   当  番
頌  栄  27(父・子・聖霊の)
祝  福        宇田慧吾牧師
後  奏  奏 楽 者
報  告

○次週予告

●お知らせ

◇亀岡礼拝は5月10日以降も会堂での礼拝は牧師と牧師家族のみで行い、他の方々には非公開とします。船南礼拝は公開の礼拝に戻ります。但し礼拝順序の一部を省いて時間短縮することは継続します。

◇定例役員会   13:00   園部会堂
 昼食は用意しません。

◇船南朝夕合同礼拝のため、胡麻夕礼拝はありません。

4月26日礼拝メッセージ@園部会堂 「信仰を養う生活習慣」

宇田慧吾牧師

 親愛なる皆さま、おはようございます。各家庭での礼拝となって2週目を迎えますが、いかがおすごしでしょうか。ライブ配信での礼拝を自宅にて守っている方、ご夫婦で礼拝を守ることができたという方、いくつかの嬉しい知らせを聞いています。教会内では、老人ホームに入居されている方に心配りをしてくださった方もおられたようです。

 私自身はいくつかの用事がキャンセルになった程度でいつも通りの生活をしています。4月からは妻が仕事復帰したので、週3日は娘の子守りをしながら事務作業や応接をしています。娘が生まれる前に今後の家庭の方針を妻と相談していくつか決め事をしたことがありました。その中の一つに食前のお祈りがありました。「この食事を感謝していただきます。アーメン」という簡単なお祈りを娘がお腹の中で耳が聞こえるようになった頃から始めました。1歳3か月を迎える最近は、自分から手を合わせて、「メン!」と言えるようになりました。

 私自身、物心ついた頃には家族でそのような食前のお祈りをしていました。18歳で人生に深く悩んだ時、教会を思い出し、自然にお祈りすることができたのは、長い間続けられた食前のお祈りのおかげだったように思います。

 先日、宗教学者の小原克博さんが「信仰は常時に養い、非常時にものをいう」と話しておられました。非常時や困った時だけでなく、日頃から信仰を養う生活習慣を身に着けておきたいものです。

 今日の聖書箇所からも信仰を養う生活習慣についてヒントを得ておきたいと思います。初めに、ポイントとなる言葉を挙げます。

「今や、キリスト・イエスに結ばれている者は、罪に定められることがありません」8:1
「霊に従って歩む」8:4
「神の霊によって導かれる」8:14
「神の子とする霊を受けた」8:15
「この霊によってわたしたちは『アッバ、父よ』と呼ぶ」8:16

 パウロはキリストに結ばれることで罪の赦しを受け取ることができました。通常、自分の罪を責め立てる相手には心を閉ざすものかと思います。パウロは十字架にかかり死んで復活したキリストに出会うことで、神さまは自分の罪を責めないということを知りました。逆に、自分の罪の責任を肩代わりして、痛みを引き受けてくれたということを知りました。自分のために傷ついてくれたキリストにパウロは心を開くようになりました。

 キリストに心を開いたパウロは、聖霊に従って生きるようになりました。具体的に言えば、祈りの中で神さまの思いを確かめ、自分の思いではなく神さまの思いに従って生きるようになりました。また、自分の思いに基づく選択より、神の導きに信頼するようになりました。

 導きに信頼するようになったパウロは、神を「アッバ、父よ」と呼ぶようになりました。「アッバ」は「パパ、おとうちゃん」という意味でキリストが好んだ呼び方です。パウロにとって神さまが、忠実に従うべき主人というだけでなく、幼子が素直な信頼をもって頼る親のような存在になったことがうかがえます。

 三つのポイントがありました。
・神さまに心を開く
・聖霊に従う
・幼子のように神さまに頼る
 この三つ、心にあるでしょうか。

2020年4月26日の週報

コロナウイルス感染拡大を防止するため、教会に集うことができません。礼拝の式次第を掲載いたしますので、各ご家庭で共に賛美し祈りましょう!●

○復活節第3主日礼拝 労働聖日
●亀岡礼拝(亀岡会堂) 午前10時30分
司会:片岡広明牧師 奏楽:HymnPlayer

前  奏           
招  き      詩編 89:16
頌  栄  24(たたえよ、主の民)
主の祈り  (讃美歌93-5A)
使徒信条  (讃美歌93-4A)
聖  書  ヨハネによる福音書
      21章1-14節 (新P.211)              
祈  祷         
讃  美  324(主イエスはすすみて)
説  教   「みんな知っていた」   
祈  祷        片岡広明牧師
讃  美  79(みまえにわれらつどい)
献  金  
頌  栄  27(父・子・聖霊の)
祝  福        片岡広明牧師
報  告
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●船南礼拝(園部会堂)  午前10時30分
司会:宇田慧吾牧師 奏楽:今井恵一兄
前  奏          奏 楽 者
招  き    マタイ28:5-7   司 会 者
頌  栄  24(たたえよ、主の民)
主の祈り  (讃美歌93-5A)
使徒信条  (讃美歌93-4A)
聖  書  ローマの信徒への手紙
       8章1-17節 (新P. 283)                
祈  祷           司 会 者
讃  美  46(すべての人よ) 2回繰り返し
説  教  「アッバ、父よ」
祈  祷         宇田慧吾牧師
讃  美  466 (山路こえて)
献  金  感謝祈祷     当  番
頌  栄  27(父・子・聖霊の)
祝  福         宇田慧吾牧師
後  奏           奏 楽 者
報  告

〇次週予告
【5月3日 復活節第4主日礼拝予告】

◇亀岡礼拝は会堂での礼拝は牧師と牧師家族のみで行い、他の方々には非公開とします。船南礼拝は牧師と出席可能な役員のみで行います。

○お知らせ
◇新型コロナウイルス感染拡大防止のため、亀岡礼拝は非公開で牧師家族のみで行います。船南は牧師と出席可能な役員のみで行います。礼拝順序を一部省いて時間を短縮して行います。この方法による礼拝は5月3日(日)まで継続します。この期間中は胡麻夕礼拝と須知礼拝は休止とします。5月10日(日)からは通常に戻す予定ですが、状況を見て判断します。木曜日の亀岡の祈祷会も4月中はお休みです。

◇教会に集うことができなくても、わたしたち丹波新生教会は信仰によって結ばれています。日曜日の礼拝の時間に合わせて、それぞれの場所でその日の聖書箇所を読み、神様を賛美し、心を一つにして祈りましょう。神様がすべての人の命を守って下さるように、そして再び相集い、共に礼拝を守れる日が来ますように祈りましょう。

4月19日礼拝メッセージ@園部会堂「人格の成熟、社会の成熟」

宇田慧吾牧師

 今週から3週間は牧師と限られた方だけで礼拝を守ることとなりました。新型コロナウィルスの感染拡大によって、各国の社会がチャレンジを受けているのと同じように、私たち各個人の精神もチャレンジを受けています。恐れに支配されず、このような時こそ他者への思いやりや互いに支え合う心、日常への感謝を新たにしましょう。

 重要な教訓はいつも非常時に心に刻まれるものです。私は前任地が福島県の教会でした。3.11の震災から3年後の着任でしたが、保育園では外遊びが制限されていて、園庭以外での野外活動は線量計で安全が確認された場所に限られていました。あぜ道などは除染作業の順番が遅かったため、その辺の雑草は触ってはいけないという意識を小学生なら当然に持っていました。京都に赴任してすぐ、幼稚園の子どもたちが野外で木の実を食べているのを見て驚愕したことを思い出します。震災後の福島で育った子どもたちは、自然の中で自由に思いきり遊ぶという経験が制限されました。それはとても残念なことでした。一方で、子どもたちのために保育園の先生たちは遊びの工夫に心を砕いていましたし、安全な遊び場の確保に努めていました。福島県外の方たちからは砂場の砂を送っていただいたり、保養キャンプの受け入れでお世話になったりもしました。きっと福島の子どもたちは、自然に触れられることのありがたさや困った時に助け合うことの大切さを身をもって知った人に育ち、これからの社会をつくってくれると信じています。

 非常時が重要な教訓を人の心に刻む一方で、非常時は人の心の弱さもあらわにします。ヨーロッパでペストが猛威をふるった時には、ユダヤ人が井戸に毒を入れたという噂が広がり、罪のない人たちが犠牲となったそうです。関東大震災の時にも同じように根も葉もない噂が広がり特定の人たちが犠牲になりました。こういった社会の一部の人たちに非常時の恐れが押しつけられることを歴史は経験してきました。非常時にはもともと人の心の中にある差別意識が噴き出すことがあります。今の日本の状況ではどうでしょうか。休業補償について特定の職業が対象外とされそうになりました。また、もし自分が感染したら、感染による症状よりも周囲の目が恐いという声も聞きます。

 非常時は、重要な教訓を心に刻むチャンスであり、同時に、人の心の弱さがあらわになるピンチでもあります。私たちは前者の道を行きましょう。また、自分の心に潜んでいる弱さを見つめ自覚する機会としましょう。

 今日の聖書箇所には次の言葉がありました。

「わたしは自分の望む善は行わず、望まない悪を行っている」(ローマ7:19)。

 心の中にある善と悪のジレンマが語られています。私自身がこのジレンマに向き合い始めたのは15歳頃かと思います。自分の望まない悪に影響されることに激しく苦悶しました。善を望んで生きようとしても、悪を行ってしまうことに激しい自己嫌悪を抱きました。また、自分の中の問題を外に投げつけて、たくさんの人たちを批判し傷つけました。

 一方で、それでも善を望み、ジレンマを抱え続けることで、だんだんと自分の弱さを自覚し、弱さを操舵できるようにもなっていきました。自分の弱さと向き合う作業は苦しいものでもありましたが、いつも信仰が支えとなりました。

 ジレンマの苦しみを語るパウロも「私はなんと惨めな人間なのでしょう」と深く嘆いています。ただ興味深いことに、そう嘆いたすぐ後で「わたしたちの主イエス・キリストを通して神に感謝いたします」と感謝の言葉を告白しています。パウロもまた善悪のジレンマを嘆く経験を重ねる中で、神の忍耐・寛容・慈しみ・赦しを受け取ってきたのでしょう。

 善悪のジレンマは人格を成熟させます。自分の弱さを自覚する前の子どもには天真爛漫という美しさがありますが、同時にひどく残酷な一面もあります。一方で、自分の心の中にある悪・弱さ・罪といった問題に向き合い、嘆き傷つきながらも、善く生きることを望んで生き続けてきた人には成熟した美しさがあります。成熟した人は他者の心に寄り添う思いやりや慈しみ、感謝の心が豊かです。

 今、私たちは個人の人格においても、社会そのものにおいても成熟の好機に立っています。恐れに縛られず、弱さに流されず、最善を選び、成熟に向かいましょう。他者を思いやる心、互いに支え合う心、日常への感謝を新たにしましょう。

2020年4月19日の週報

コロナウイルス感染拡大を防止するため、教会に集うことができません。礼拝の式次第を掲載いたしますので、各ご家庭で共に賛美し祈りましょう!●

〇礼拝式次第 復活節第2主日
●亀岡礼拝(亀岡会堂) 午前10時30分
司会:片岡広明牧師 奏楽:HymnPlayer
前  奏
招  き  テサロニケ 第一 3:8
頌  栄  24(たたえよ、主の民)
主の祈り  (讃美歌93-5A)
使徒信条  (讃美歌93-4A)
聖  書  ヨハネによる福音書 20章19-31節 (新P.210)
祈  祷
讃  美  328(ハレルヤ、ハレルヤ)
説  教   「あなたがたに平和があるように」    
祈  祷  片岡広明牧師
讃  美  326(地よ、声たかく)
献  金  
頌  栄  27(父・子・聖霊の)
祝  福  片岡広明牧師
後  奏
報  告
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●船南礼拝(園部会堂)  午前10時30分
司会:宇田慧吾牧師 奏楽:今井恵一兄
前  奏  奏 楽 者
招  き  マタイ 28:5-7  司 会 者
頌  栄  24(たたえよ、主の民)
主の祈り  (讃美歌93-5A)
使徒信条  (讃美歌93-4A)
聖  書  ローマの信徒への手紙 7章7-25節 (新P. 282)               
祈  祷  司 会 者
讃  美  46(すべての人よ) 2回繰り返し
説  教  「人格の成熟・社会の成熟」
祈  祷  宇田慧吾牧師
讃  美  520 (真実に清く生きたい)
献  金  感謝祈祷   当  番
頌  栄  27(父・子・聖霊の)
祝  福  宇田慧吾牧師
後  奏  奏 楽 者
報  告
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〇次週予告


◇亀岡礼拝は会堂での礼拝は牧師と牧師家族のみで行い、他の方々には非公開とします。船南礼拝は牧師と出席可能な役員のみで行います。

〇お知らせ
◇新型コロナウイルス感染拡大防止のため、亀岡礼拝は非公開で牧師家族のみで行っています。船南は牧師と出席可能な役員のみで行います。礼拝順序を一部省いて時間を短縮して行います。この方法による礼拝は5月3日(日)まで継続します。この期間中は胡麻夕礼拝と須知礼拝は休止とします。5月10日(日)からは通常に戻す予定ですが、状況を見て判断します。木曜日の亀岡の祈祷会も4月中はお休みです。

◇3月の教会総会で承認された2020年度の主な行事予定(案)のうち、5月24日の創立(合同)記念礼拝は9月27日に園部での開催とします。6月7日教会総会当日の礼拝は各地区での礼拝の予定でしたが、亀岡合同礼拝に変更します。

新型コロナウイルス感染拡大への対策について(5/6更新)

新型コロナウィルス感染症への対策として、下記の通り対応します。

◆亀岡会堂
4月12日~5月31日まで礼拝を非公開とします。
この間の祈祷会もお休みとします。通常礼拝再開は6月7日です。

◆船南地区
園部会堂:5月10日から通常の礼拝を再開します。
胡麻は5月17日再開。
須知は5月26日再開。

詳細が決まり次第、随時情報を更新していきます。