≪主の祈りの学び≫6「みこころの天になるごとく 地にもなさせたまえ」

宇田慧吾牧師

 原文の順番で訳すと「実現されますように、あなたの御心が、天
におけるように地においても」となります。「御心」という言葉は
「神の意志、判断、願い」という意味の言葉です。

 手塚治虫の名作の一つに『リボンの騎士』がありますね。天使の
いたずらで男の子と女の子の心をもって生まれた王女サファイヤが
恋や宿命に奮闘する物語です。いたずらをした天使チンクは天の父
の命令で、サファイヤから男の心を抜き取るために地上に遣わされ
ます。天の父のおつかいを果たすために奮闘するチンクの姿は「地
にもなさせたまえ」という祈りのイメージに重なるところがありま
す。

 むかしイタリアを旅行していたときに、電車でシスターに席を譲
ったら、‛You are like an angel’「あなたは天使みたいな人ね」
と言われたことがあります。天使は空を飛べて超自然的な力で働く
存在というだけでなく、天の父の願いをこの地上に実現する人のこ
とでもあります。

 「御心の天になるごとく、地にもなさせたまえ」と祈るとき、ぜ
ひ「わたしが天使として用いられ、神様の願いがこの地上にも実現
されますように」そんなイメージを持っていただきたいのです。

 これはわたしが勝手に言っているのではなくって、伝統的な解釈
なのです。ハイデルベルク信仰問答ではこの祈りについて「自らの
持場と職を、天にいるみ使いのごとく、喜んでまた忠実に、つとめ
る者とならせてください」と書かれています。「自らの持場と職」
は地にあるということが重要です。そして、そのわたしが立たされ
ている場所で天使として働くことが期待されています。

「あなたはきっと わたしの天使
わたしもそっと だれかの天使」

 そんな「きっと」「そっと」感がポイントです。わたしたちが気
づかないときにも、わたしたちはお互いにとって天使なのです。